園田 英人 教授 インタビュー
――先生のご出身と幼少期についてお聞かせください。
園田: 私は佐賀県佐賀市諸富町の出身です。自然豊かな環境で育ち、小学校低学年までは虫捕りや釣りをして遊んでいました。祖父が理科の教師だったこともあり、夏休みには一緒に植物採集を行い、標本作りに取り組みました。
本を読むよりも、図鑑を眺めさまざまな分類に興味がある子供でした。実家は薬店を営んでいたので、身近に多くの薬がある環境で育ちました。
高校生時代 愛犬と
――今の道に進まれたきっかけは何でしょうか。
園田: 小学校高学年の頃、祖母が直腸がんを患い通院するようになったことが、医師という職業に興味を持つきっかけでした。当時はまだ病名を本人に伝えない時代で、子どもながらに大きな葛藤を感じていました。
入退院を繰り返し、徐々に弱っていく姿を間近で見ながら、「がんとは何か」と疑問を抱き、図書館や書店で関連書籍を読むようになりました。「なぜがんは発生し、人の命を奪うのかを知りたい」という思いが、医師を志した原点です。
佐賀大学附属中学校から佐賀県立佐賀西高校を経て、自治医科大学に進学、九州大学消化器・総合外科に入局し、現在もがんを中心とした診療と研究に取り組んでいます。
大学生時代 教室で
――研究テーマ「がんという疾患を解決すること」や「がんの匂い」研究について教えてください。
園田: がんという疾患は、30年前と比べると長く生きられるようになり、治癒が期待できる疾患へと変化してきました。しかし、人類が克服するためには、さらなる知見の蓄積が必要です。世界中で多くの研究が進められ、薬物療法や手術手技も進歩していますが、最も効果的なのはやはり早期発見です。
その手段の一つとして、私は「がんの匂い」に着目しました。2006年から2009年に福岡歯科大学に勤務した際には、がん探知犬を用いた研究に取り組み、呼気や便汁を用いた検証で90%以上の識別精度を確認しました。また、この研究で、がんになると特有の匂いが出現することを明らかにしました。
一方で、探知犬は個体差や体調の影響を受けるため、実用化には課題があります。現在は、九州大学農学部の先生方と連携して研究し、尿中に含まれるがん特異的な匂い物質を分析を進めています。研究は一人では完結できません。志を共有できる仲間と協働し、継続して前進していくことが重要だと考えています。
がん探知犬マリーン
セントシュガーがん探知犬育成センター
セントシュガーがん探知犬育成センター 犬舎外観
――がんについて知りたいということが研究の原点につながるのでしょうか?
園田: 医療の現場で強く感じてきたのは、「なぜもっと早く発見できなかったのか」というジレンマです。がんはいきなり進行がんになるのではなく、必ず早期の段階が存在します。もう少し早ければ救えたのではないかと感じる症例を数多く経験してきました。
その思いが、早期発見につながる「がんの匂いの研究」を志す原点となりました。前回、福岡歯科大学に赴任した際に、この研究をライフワークにしたいと考えるようになり、現在に至るまで約20年継続しています。
――診療する際に心がけていることはありますか。
園田: 「患者さんを自分の家族のように診る」という先輩からの教えを大切にしています。検査や治療の選択に迷った際には、「自分の家族に同じことを行うか」と自問するようにしていますし、そういう思いで日頃から準備するように心がけています。実際に同僚や両親の手術も執刀しました。
また、患者さんの背景や価値観を踏まえて最適な答えを導くためには、チーム医療が重要です。看護師や薬剤師などの医師以外の職種が患者さんの生活背景や価値観を深く理解していることも多く、その情報共有がとても重要です。そのためにも、日頃のコミュニケーションは大切だと思っています。
馬渡島診療所退任時 診察を通して繋がりを築いた島のみんなとお別れ
――研究で困難に直面した際はどのように乗り越えますか?
園田: 構想を練っている時間が楽しい一方で、実際に研究を進める過程では困難も多くあります。しかし、自分が描いた目標や夢が明確であればあるほど、それを乗り越える力になると思います。
到達すべきマイルストーンを明確にし、その先の目標を具体的に描くことで、困難な局面でも前進することができるのではないでしょうか。やがて、その過程自体を楽しめるようになると思います。
――教育・臨床と並行して研究にも注力するための工夫はありますか。
園田: 臨床や教育の現場で感じた課題こそが、未来を変えるための研究の出発点になります。「これを解決したい」という思いが研究を継続する原動力です。
また、研究は一人で完結するものではなく、専門性を持つ仲間との連携によって発展します。互いの領域を理解し合いながら協働することが重要だと思います。無理をせず、継続することを大切にしながら、少しずつでも前進していくことが大切だと考えています。
――学生への教育方針についてお聞かせください。
園田: 2年生の最初の授業では「曼荼羅」を例に、ミクロからマクロまで世界が相互に関係し合って成り立っていることを伝えています。一人では完成しない世界の中で、それぞれがつながり合い、役割を果たすことの重要性を考えてほしいと思います。そして、今最新の知識を話したとしても、学生諸君が一人前になる頃には過去のものになっているでしょう。しかし、その歴史を知ることは、これからの未知の世界を生き抜くための指針となります。興味を持って積極的に世界を作っていってほしいと思います。
また、知識はインプットだけでなく、アウトプットを意識して学ぶことが大切です。学生時代に経験する一つひとつの課題に対して、ゴールを想像して取り組むこと。それは、学業に限らず、スポーツや文化的活動、学園祭の運営など、その積み重ねが結果につながります。もし失敗したとしても次への学びと捉え、自ら想像して、自分のゴールに向かって頑張ってほしいと願っています。
――外科学と歯科学の連携について教えてください。
園田: 周術期の口腔管理が、術後や抗がん剤治療中の合併症の低減に寄与することはすでに明らかになっています。さらに近年では、歯周病菌が、がんの発生と進展に関連していることも多くの研究で報告されています。
歯周病菌はがんだけでなく、心血管疾患、糖尿病や認知症など多くの全身疾患との関連が報告されており、口腔医療の役割はますます重要になってくると思います。この分野を科学的に解明し、医科歯科連携をさらに発展させていくことも重要だと考えています。
――最後に、受験生へのメッセージをお願いします。
園田: 福岡歯科大学は新しいキャンパス環境のもと、学びに集中できる恵まれた環境が整っています。学生時代という貴重な時間の中で、自分自身と向き合い、できるだけ具体的な将来の目標や夢を見つけてほしいと思います。
本学は、そのためのチャレンジができる場所です。私たちも全力で支援しますので、安心して学びに来てください。
――今日は貴重なお話をありがとうございました。










