福岡歯科大学

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学部・大学院

谷口 祐介 講師 インタビュー

「入学して良かった大学~つながりとご縁が創る歯科医師の未来~」
2025.11.04
咬合修復学講座 口腔インプラント学分野
谷口 祐介 講師

――先生のご出身と大学受験まではどのように過ごされてきたのかお聞かせください。

谷口:私は大阪市の出身です。両親が共働きだったため、幼い頃は7歳上の兄と5歳上の姉によく遊びに連れて行ってもらいました。高校生までは、勉強に対して「受験のために必要だからする」という感じで、受け身で勉強していたと思います。
 大学受験で学部を選ぶ際に、身内には歯科医師はおりませんが、子供のころの虫歯治療から高校時代の矯正治療まで歯科医院へ継続して通っていたことで昔から歯科医師を身近に感じていたこともあり、自分が歯科医師として働いている姿を最も具体的にイメージできたことが、歯学を志すきっかけとなりました。センター試験(現在の共通テスト)を利用できて地元の大阪からも交通の便がいい福岡歯科大学を受験することに決め、合格を得ることが出来ました。

――歯科大に入学後はどういう流れで大学院に進学されたのでしょうか? 

谷口:大学院進学のきっかけは、大学5年生に、臨床実習で接したインプラント科の城戸前教授(当時は准教授)が臨床されている姿がかっこよく、自分もそのように臨床が出来るようになりたいと考えるようになりました。
 インプラントとは、顎の骨にネジ型のチタン金属を埋めて抜けた歯の代わりにして噛めるようにする治療です。城戸先生は博士号や日本口腔インプラント学会認定の専門医・指導医を取得されており、「少しでも近づき、同じ目線で物事を見られるようになりたい」と考えて大学院進学を決めました。大学院時代に、アメリカのロマリンダ大学インプラント科に留学し、研究や臨床を学んだのですが、その留学を決めたのも同じ理由です。   

――具体的にアドバイスなどを受けたのでしょうか?

谷口:はい。大学院の選定については、学部学生時代に進路選択として、歯科医師になれた際に、どの大学で学んだら良いか城戸先生に相談した時に「大学のネームバリューやイメージで決めずに、学会に行って研究内容などの情報を取得し選択肢を広げてから自分の意志で決めるといいよ」と助言されたので、実際に、当時大阪で開催されていた日本口腔インプラント学会に学生会員として参加しました。学会発表の内容を見て回ると福岡歯科大学の研究内容が、インプラントの治療例だけではなく、インプラント治療でのトラブル対応など多岐にわたり、高齢社会への対応も含まれていたことから、非常に興味深くて面白いと感じたので、母校の口腔インプラント学分野専攻で大学院に進学しました。
 学部学生も学会の会員になれるので、進路先に迷っているのであれば、ぜひ興味のある学会に参加して情報収集することをお勧めします。

――本学での研究について教えてください。

谷口:福岡歯科大学口腔インプラント学分野には研究ビジョンがあり私たち医局員は、研究テーマは違っても同じ方向に向かって進むために下記の図(口腔インプラント学分野研究樹)を参考にしています。

①インプラント研究樹.jpg

 現在の私の研究ミッションは、「インプラント治療を受けた患者さんが通院困難になった場合でも、継続して専門的なインプラントに関する医療資源を届けること」です。
 2018年頃から、専用カメラを用いてお口の中のスキャンで撮影したデータから、立体的な歯の模型を作って訪問歯科治療で使ってもらう仕組みを構築するというこれまでにあまり報告のなかった研究を始めました。

――現在は、オンライン診療システムの開発をされているとお聞きしていますが… 

谷口:そうなんです。歯科には実は色んな専門分野があって、訪問歯科診療をする歯科医師がインプラントの専門医ではないことがほとんどです。インプラントに詳しくなくても、訪問歯科医師とインプラント専門歯科医師がオンラインでデジタルデータのやり取りを行うことで、訪問歯科医師がスムーズに診療できるようにサポートするシステムの開発に取り組んでいます。
 さらに最近では、インプラント患者さんの口臭測定データを活用して、インプラント周囲炎にかかるリスクを予測するアプリの開発にも取り組んでいます。口臭という検査の時に痛くない指標を利用することで、患者さん自身が簡単にリスクを把握でき、さらに、インプラント専門医が患者さんのインプラントの状態をモニタリング出来る仕組みを目指しています。

――予防歯科領域の研究もされていますよね?

谷口:はい、そうなんです。インプラント周囲炎は一度かかると完治が困難ですから、予防的アプローチが重要です。そのため私は、乳酸菌を用いたプロバイオティクスによる新しい予防方法の研究も進めています。今後は、これらの研究成果を治療現場に還元し、通院困難な患者さんでも安心してインプラント治療を継続できる体制を整えていきたいと考えています。
 本学口腔保健学講座の谷口奈央教授との共同研究で、プロバイオティクス(微生物)でインプラント周囲歯肉の炎症が改善する効果について臨床研究を行っています。その内容をまとめたものを『Life』という国際雑誌に執筆して、2024年に掲載されました。今も継続的にプロバイオティクスの口腔内の効果を検証しています。

――ずいぶん幅広く研究されているんですね?

谷口:実は、この二つの研究は繋がっているんです。将来的には、通院困難なインプラント患者の口腔内を、専用カメラや開発した口臭測定装置を用いてオンライン診療でモニタリングし、必要に応じて清掃指導を行い、悪い細菌がいなくなったお口の中に良い菌である乳酸菌を用いたプロバイオティクス(微生物)で良い状態を維持し、管理することを想定しています。それらの結果を、多職種の領域まで広げられることを期待しています。

――どのように研究活動の組み立て方を学んだんですか?

谷口:福岡歯科大学の大学院に進学し、本学分子機能制御学分野(旧薬理学分野)の前教授である山﨑純先生から「レーザーによるジルコニアインプラントの粗面化がオッセオインテグレーションに及ぼす影響」というテーマの研究を通して、研究活動の組み立て方を一から教えていただきました。本学は、大学院修了後も学内の様々な分野の先生方から研究に必要な知識や技術、人脈など様々なサポートがあります。今も成長途中ですが、様々なチャンスをもらえたのは縦や横の人の繋がりが強い本学ならではの研究環境のお陰だと思っています。

――ご専門であるインプラントの最新の治療法について高校生でもわかるように簡単に教えてもらえますか?

谷口:2014年まで、日本ではインプラントの型取りをする際は、シリコーン印象(やわらかいゴムのような材料)を用いて行う方法しかなかったですが、最新の治療法ではお口にスキャナーを用いてカメラ撮影のように立体的な画像を作ることが出来るデジタル技術を活用しています。
 非接触で、途中で撮影を止めた後も、続きから撮影して型取りすることが出来ます。その性質上、治療の時にお口の奥に触れて気持ちが悪くなる患者さんでも比較的容易に治療を受けることが出来ます。そのほかにも、デジタル技術を応用することで安全にインプラントの手術を行うなど利点が多いため、これらは急速に広がっています。歯科医師も診療がしやすくなるだけでなく、患者さんの身体的な負担が少なくなり、来院回数を少なくすることが出来るなど、患者さんにとってメリットが多い治療法です。

②ナビゲーションシステムを用いたインプラント埋入手術風景.jpeg

――学生との関係性や接し方、教員として心がけていることがあれば教えてください。

谷口:学生に将来像をイメージさせることが重要と考えています。学生の話をよく聞いて、学生がなりたい歯科医師像や、進路を考慮して、話す内容を選ぶようにしています。
 学生が卒前や卒後など、どの立場であれ、ともに歯科学を学んでいる同志であるという姿勢を見せるようにしています。自分がいま困っていること、興味があること、過去に臨床でつまずいて失敗したこと、研究で積み上げていたものが実って論文になった時の喜びなど、その時の自分の状況を共感してもらうようにコミュニケーションを取るようにしています。
 私は器用ではないので、苦労話が多いですが、なるべく、ポジティブに歯学を学ぶ上での心構えやパッションなど、先輩方に教えていただいたことを伝えるようにしています。

(本学の教育改善賞受賞の様子)        (本学の最優秀教育改善賞受賞の様子)

――本学の学生の特徴を教えてください! 

谷口:色々なキャリアを経て最終的に歯学を学ぶことを選択した学生や、親の後を継ぐ使命を持った学生などなど、目標をもって意欲的に学ぶ姿勢がある学生が多いと思います。   

――最後に、受験生の皆さんにメッセージをお願いします! 

谷口:歯科医師という資格は、社会人として仕事をしていくうえで大きなアドバンテージです。また、歯科医師免許で出来ることは、歯科医院を開業していろいろな特徴を持って歯科診療を行うだけでなく、大学等で教育を行うこと、大学で研究を行うこと、研究内容を発展させて特許を取得して起業することなど、イメージ以上に多くの可能性をもつ職業です。さらに、今後は歯科医師が減少していくと予想されており、より成り手が必要とされてきています。
 歯科医師を目指す大学は様々ありますが、この福岡歯科大学は、優秀な教員、先輩方、同窓の先生との良縁に恵まれ、学生に対してチャンスをたくさん与えてくれる、素晴らしい大学です。
 福岡歯科大学に進学した皆さんと、共に学べることを楽しみにしています!

――今日は貴重なお話をお聞かせくださりありがとうございました。

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