丸田 道人 講師(現:准教授) インタビュー
――先生のご出身はどちらですか?
丸田:大阪の枚方市です。九州大学へ進学するまでは、ずっと大阪で生活していました。
福岡はコンパクトにまとまっていて、暮らしやすく、海と山に囲まれているため食べ物がおいしいですね。
――学生のときに打ち込まれたことはありますか?
丸田:ラグビーです。体が大きかったのでスカウトされて始めたのがきっかけでしたが、学生時代はラグビー一筋でフォワードをしていましたね。首の骨を折ってからはマネージャーになりましたが、最後まで続けましたよ。
――現在、趣味で楽しんでいることはありますか?
丸田:家を整理していたら家の中が淋しくなったので、昔から興味のあった熱帯魚(淡水魚)でも飼おうと思って始めたのですが、熱帯魚は可愛いし、面白くなって、現在では水槽も5個に増えました。なので休日は熱帯魚の水槽の掃除をしている時間が多くなりましたね。
丸田先生を癒してくれるお魚達!!
■研究について
――先生が研究者を目指されたきっかけを教えてください。
丸田:6年生になるまでは就職して開業するつもりでした。どこに就職しようか考えていたときに、臨床実習で担当させていただいた患者さんが良性腫瘍で顎の骨を切らないといけない患者さんだったのです。
その時たまたまローテーションで回っていた口腔外科のゼミで人工骨の発表が行われていて、「これだ!」と思って大学院に進むことを決めました。以前から部活の先輩に大学での研究の面白さを説かれていたのも重なって、口腔外科の大学院に進んで、歯科理工学の教室に出向しながら研究生活が始まりました。
――先生が所属する生体工学の分野とはどのようなものなのですか?
丸田:歯科医師が治療に使う材料を教育・研究する分野ですね。歯科材料のバリエーションは多様です。高校化学の範囲で言えば金属・無機化学・有機化学それに物理学などがミックスされた分野です。もちろん人体に使用する材料なので、生物学的要素も加わってきます。
――口腔外科医ではなく「歯科理工学(生体工学)」でアパタイト(人工骨)研究を一貫してなさるようになったのはなぜですか?
丸田:やはりこれも大学院に進んだのと同じで、患者さんとの出会いです。歯を支える土台は顎の骨です。交通事故などによる外傷や腫瘍など、良性・悪性にかかわらず顎の骨をなくした場合は食事をしたり、モノを飲み込むことが手術前より困難になることが多々あります。人工骨で失った骨と同じ働きをするモノを作ることができれば、その後の患者さんの人生をより豊かにすることができますよね。研究は治療へつながる大切な一歩と考え臨床から研究へとシフトしていきました。また、アパタイトの研究は今流行りの再生医療では補えない領域でもあり、とても面白味を感じています。
研究中の丸田先生
アパタイト(人工骨)の電子顕微鏡写真
アパタイトは歯科でだけ使われるのですか?
丸田:いえ、アパタイトは歯科分野よりも医科の分野で多く使用されています。代表的な例で言えば、骨粗鬆症による脊椎骨折の予防措置としてスカスカになった骨の内部にアパタイトを入れて強度を確保する治療などがあります。
それに対して、歯科での治療は扱う部分が顔に近いため、口の中にメスを入れて傷跡が顔に残らないように治療をします。そのため細菌感染に対する抵抗性を獲得するなど、医科分野以上の工夫が材料側に必要になります。実際の治療で必要なレベルは何か?ということを知っているのが歯科医師として研究をしている強みと思いますので、基礎的な研究を積み重ねて口腔外科的分野でも安心して使うことのできる人工骨を開発していきたいと考えています。
――先生の研究は患者目線に立つと、どのような効果が期待できますか?
丸田:歯を失うと、歯のあった部分の骨がだんだん薄くなっていきます。そうするとインプラントや入れ歯による治療の難易度が上がってきます。そんな時に失われた顎の骨の高さを回復するためにアパタイト(人工骨)などが使用される高度な治療なども行われるようになってきています。
■教育について
――先生の教育に対する思いをお聞かせください。
丸田:医学教育にも3本柱として知識・技術・態度という3つの基本的能力の育成の重要性が謳われています。私も、歯科医師として必要な基盤的知識の教授のみならず、人間性を豊かにはぐくむことが医療人の育成には大切なことだと思っています。 特に私の担当している歯科材料の分野は卒業後も常に新しい材料が生まれてくるために、卒業後には自分で判断して使う必要があります。そのときに重要になる「考える力」を大学時代に養うことが重要だと考えています。
――先生は英語で教科書や教材等を作られるなど、英語教育についても力を入れておられるようですが、どちらで語学力を磨かれたのですか?
丸田:海外留学したわけではありません。大学院時代にお世話になった研究室が、フィリピン・中国・バングラデシュ・インドネシアなど海外からの国費留学生に囲まれた環境だったのが大きいですね。日常会話からゼミの発表まですべて英語で行っていました。最初はヒアリングにも大変苦労しましたが、4年もいれば聞いて理解することに苦労はしなくなりましたね。
インタビューを受ける丸田先生
――現在、第1学年の助言教員をされていますが、現段階から国家試験に向けての意識付けをなさっていますか?
丸田:歯学部は卒業までに6年間の教育課程があります。それはちょうど中学高校の6年間と同じです。しかし、そこには大きな違いがあります。それは「歯科医師」になるという大きな目標を持って本学に入学したことです。そして同時期に入学した全国の学生が同じスタートラインに立って歯科を学び始めることです。6年間という長丁場ですから小さな差が将来には大きな差となることを意識させ、学ぶ大切さを意識させるように指導しています。
――先生の教育のモットーはなんですか?
丸田:信じて任せる」です。
――今回インタビューをさせてもらって感じたことは、先生自身が相手を信じて任せるという懐の深い大きな先生なので、誰からでも親しみを持たれる先生なのだと・・・。
インタビューにご協力いただきまして有難うございました。
丸田講師(現:准教授)からのビデオメッセージ