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学部・大学院

梅崎 陽二朗 准教授 インタビュー

「歯科心身症のスペシャリスト」
2023.05.08
総合歯科学講座 高齢者歯科学分野
梅崎 陽二朗 准教授

――先生のご出身はどちらでしょうか

梅﨑:出身は神奈川県川崎市です。中学・高校で東京都内の麻布中学校・高校へ進学し、大学は東京医科歯科大学に進学しました。

――学生時代は何かスポーツをされていらっしゃいましたか?

梅崎:中学校からずっと部活でアルペンスキーをしていたのですが、大学からアメリカンフットボールを始めました。
 


(△「中学・高校でのホームゲレンデでスラローム(回転)のコースを作り、練習していました。」)

――大学でアメリカンフットボールをやってみたいと思ったきっかけは?

梅崎:部活の先輩方がいい人たちばかりで、勧誘された時にいいなと思ったのと、スキー以外の他のスポーツもやってみたいなと思って。あとアメリカンフットボールなら大学から始める人が多く、スタートラインが一緒なので(笑)入ってみたらすごくはまりましたね。アメリカンフットボールって作戦を皆で考えるんですよ。作戦が大事なスポーツなので、どういう展開にしていくか考えるのがすごく楽しかったです。今でもNFL(ナショナル・フットボール・リーグ)の決勝戦とかは毎年見ています。
 


(左:「大学のアメフト部での集合写真。背番号69が私です。」
右:アメリカの留学先でNFLの試合観戦をした時の様子)

――先生のお部屋にはたくさんの本がありますが、読書もお好きなんでしょうか?

梅崎:昔から読書は好きで、小説、漫画、雑誌とジャンルにこだわらず色々読みますね。ここにも少し本を置いていますけど、家にはまだもっとあるんですよ。親の仕事の関係で、実家に本がたくさんあったので、それで本を読む習慣が身についたのかもしれません。
 

――なるほど!本に携わる仕事に就きたいと思ったことはなかったのですか?

梅崎:自分が本に携わる仕事をしているイメージがあまりなく、そうした仕事に就きたいとは思っていませんでした。
それよりも、小学生の時に開催されていた「人体の不思議展」と、その図鑑を見た時に人の体にすごく興味が湧いたんです。その後、生物だけじゃなくて、デカルトやライプニッツ、カントそれからキルケゴールなどの哲学に興味が出て、そこから脳が好きになって…、いろいろと興味がある分野の関連書を読むようになりました。当時の興味が今の研究につながっていますね。
 

――生物や脳に興味があったということで、医学部への受験を検討したことは?

梅崎:実は私立の医学部も受験して合格していたんです。でも研究をしたいと思っていて、より面白い研究ができるか考えたときに、東京医科歯科大学だと、よりオリジナルでユニークかなと思って選びました。当時は歯医者になりたいという気持ちより研究がしたいという気持ちが強かったですね。
 

――学生の頃はどういった研究を?

梅崎:学生の頃はこれといった研究活動はありませんでしたが、大学の教育の一環で、3カ月ぐらい研究室に配属される期間がありました。僕は脳に興味があったので、脳生理学で聴覚について研究している先生の研究室を選んで、研究の手伝いをしていましたね。夏休みを返上して研究室に通っていたのを覚えています。
基礎研究の道へ進路を変更しようかとも悩みましたが、最終的には歯学部で歯科医師免許を取得しました。その過程で、歯科心身医学を専門にしている先生の講義を受講したことがきっかけで、脳と歯を組み合わせたような治療や研究も面白いなと思い、大学院に進みました。大学院では、脳画像の研究をしていました。
その後もアメリカのサウスカロライナ州にある、チャールストンという所に留学して、脳を磁気で刺激する研究をしていました。
 


(△「アメリカで研究しているときに取材を受け、新聞に載せていただきました。」)

――現在、先生が行っている研究を分かりやすく教えてください!

梅崎:原因不明の口の痛みや違和感、脳の働きをみてその原因を探っていくという研究ですね。
痛みもそうですが、違和感というのはけっこう多くて、口の中がねばねばする、異物感がある、嚙み合わせがおかしい気がする、でも診察してみると悪いところはないというような患者さんがいるのですが、そういう症状などが研究対象です。
 

――「高齢者歯科」とあるように、そのような症状は高齢者の方が多いのでしょうか?

梅崎:こうした、むし歯などがないのに違和感や痛みを感じることを「歯科心身症」というのですが、やはり高齢者の方に多くみられます。平均年齢でいうと65歳くらいですね。ただ、若い方も中にはいらっしゃいます。
診察では、ご自身の状態や生活背景などをヒアリングした後、お口の中も診察していきます。なので、精神科的な考え方も必要ですし、歯科医師としての能力もとても大事になってきます。治療はカウンセリングと薬物療法を合わせておこなっています。
 

――医科と歯科のハイブリットのような感じですね。先生のような診療をされている方は多いのですか?

梅崎:九州に限らず、全国でもこういった治療を専門でしている先生は多くはありません。近隣のクリニックからの紹介やインターネットで当院を調べて広島や宮崎といった遠方から来てくれる患者さんもいらっしゃいますし。
もちろん、精神科や心療内科を受診するのが望ましい場合は専門の先生にご紹介しますが、歯科医師がこうした治療を行うということに意味があると僕は思っています。患者さんも精神科を受診したいわけではなく、歯医者に診てもらっているということで来てくれる方が多くいるので、非常に意義のある分野ですね。
 

――治療のゴールは、違和感や痛みを感じなくなることでしょうか?

梅崎:ゴールにはいろいろなパターンがあります。違和感がなくなったから終わりという人もいれば、たまに痛いときもあるけど気にならないからもう大丈夫という人もいるんです。単純に薬だけを出せばいいという治療ではなくて、その人のゴールを一緒に考えるのも治療のひとつだと思っています。
 

――国家試験のコアカリキュラムにも「歯科心身症」が新しく追加されました。これから歯科医師になる上で知っておくべき分野となるのでしょうか?

梅崎:これまでは「歯科心身症」や、その中に含まれる「舌痛症」などは、言葉として知ってはいても、よくわからないという先生が多かったと思います。相変わらず「気のせい」とか「メンタルの問題」と片付けられてしまう事も多いです。でも、治療方法があること、長年苦しんでいる患者さんがたくさんいる事などを考えると、歯科医師がきちんと把握すべき分野だと思っています。今までは国家試験にあまり出ない分野だったので、なかなか学生さんに教えることができなかったのですが、これを機に本格的に学生さんにも知ってもらいたいですね。
 

――先生の今後の展望について聞かせて下さい!

梅崎:治療に関しては、院内での心療内科や歯科の他科と連携しているのですが、もっと連携を密にして治療方法も広げていきたいと考えています。研究活動については、今までの脳の研究というのはもちろん継続していきたいですが、こころの問題ももっと学び、幅を広げていきたいですね。
 

――最後に、歯科医師を目指す受験生に向けてメッセージをお願いします!

梅崎:歯科医師と一言にいってもさまざまな可能性があるので、自分が考えている以上のことができます。もしかすると歯科に対してありきたりなイメージがあるかもしれませんが、この世界に入ってみると楽しめると思います。入ってみていろんな道を学び、新しい歯科医師像を作っていってもらえると嬉しいです。
 

――本日はお忙しい中、ありがとうございました!

梅崎 准教授からのビデオメッセージ

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