大谷 崇仁 准教授 インタビュー
~ミクロから肉眼まで形態を探求する歯科医師~」

――先生の出身地、魅力について教えてください。
大谷:出身は、鹿児島県の南九州市です。自然豊かでお茶どころとしても有名な知覧で育ちました。 鹿児島は豚肉などの精肉が美味しいので、今でも帰省するときにはよく食べます。 お酒も一緒に飲むのですが、匂いが苦手で薩摩焼酎(芋焼酎)だけは飲めないんです(笑)
――お休みの日にしていることや、趣味などはありますか?
大谷:週末は小学生の息子たちと、公園で野球などのスポーツをしています。10年近く続けていますが、私にとっての大切な息抜きの時間になっています。 あとは、日々の習慣として、片道3キロほどの自転車通勤や自重トレーニングをしていますね。そのためか、高校生の時から体重が変わっていないんです(笑)
――歯科医師を目指すきっかけは何だったのでしょうか?
大谷:高校の時に、担任の先生から歯科医師を勧められたことがきっかけです。それまでは外科医になりたかったのですが、歯科に口腔外科という分野があることを教えてもらい歯学部への進学を視野に入れました。そして地元の鹿児島大学歯学部に入学し、口腔がんの治療に携わりたいと考え、歯科医師臨床研修の時から九州大学口腔外科に入局して、その後は大学院の博士課程を修了しました。
――大学院での経験を通してどんなことが培われましたか?
大谷:大学院の4年間のうち、最初の1年は口腔外科で外来と病棟を経験し、臨床の知識と手技を多く学ばせてもらいながら医療人としての患者さんへの接し方や寄り添うことの大切さなどを学ぶことができました。そして、残り3年間は基礎研究に没頭しました。この3年間で、客観性や広い視野を持つことの大切さ、時間の使い方、プレゼンテーション能力などが培われたと感じています。
――学生生活を通して目標となった人物はいましたか?
大谷:大学院2年生の頃に、研究の指導をしていただいた平田雅人先生(現:本学口腔医学研究センター長)と出会い、先生からできるだけ多くのことを吸収したいという思いが、基礎研究にその後もかかわり続けるきっかけとなりました。先生からの研究に対する指摘・フォローや様々な学会へ同行させてもらう中で学会口演など多くのことを経験することができました。 忘れられない経験が、初めての研究発表を海外の学会(タイ)、しかも英語でのオーラルプレゼンテーション(口頭発表)で行ったことです。もともとプレゼンテーションは好きで得意な方なのですが、慣れない英語での発表では反省することの方が多かったです。ですが、この経験を機に、いかに分かりやすく、より正確に伝えられるかという点を意識するようになりました。これは今の教育の中でも活かされているため、人生のターニングポイントの1つといえますね。
――次に、先生が所属されている機能構造学分野について分かりやすく教えてください。
大谷:機能構造学は人体の正常な構造を学ぶ分野です。目で見える構造はもちろん、顕微鏡を使って見ることができる細胞レベルの構造も含まれます。また、人が受精卵から人の形になるまでの構造の変化を学ぶ発生学という学問も担当しています。
――研究内容について教えてください。
大谷:骨の中に含まれるタンパク質の1つであるオステオカルシン(GluOC)が脂肪細胞に作用し、脂肪の分解などを促進することで肥満や糖尿病を抑制しているというメカニズムを研究しています。これは大学院生の頃から現在まで約十数年かけて研究しています。 そして、GluOCの受容体であるGPRC6Aというものに着目し、この活性化によって膵臓癌の増殖や転移が抑制されるのではないかと考え、大学院生とともに研究を行っているところです。
――研究されていて困難にぶつかった際には、どのようにされていますか?
大谷:一度立ち止まり、明確に分かっていることとそうでないことを改めて整理します。あるいは同じことをするにあたって、別な手法はないかなどを検討します。あとは、周りの先生たちへ相談しながら常に新しい技術を取り入れるようにしています。
――授業で先生が工夫している点や大切だと考えていることはありますか?
大谷:人体の構造は複雑ですが、簡単な絵を描いたり、名称に使われている漢字の意味を理解して覚えたりすることが記憶の定着につながるのではないかと考えています。 また、私自身が学生の時に、板書の講義の方が頭に残ったという経験があるため配布資料と同じ内容でも黒板に板書し、再度説明することを心掛けています。 初見である学生には、手書きの説明の方が学生の理解スピードに合っており、非常に有効だと思っています。
――1年生の助言教員として力を入れている点は何かありますか?
大谷:普段の学習に対する姿勢や周りの友達との関係、部活動・アルバイトなど学習以外の活動も話を聞き、時間の使い方がうまくできているかを確認します。そのような会話の中で、学生の方からあまり周囲に言えない悩み等を話してくれることがありますので、学生生活をより良い方向へ導くお手伝いができればという思いで、助言活動を行っています。
※助言教員制度・・・各学年の学生7~8人に対して教員1人を配置し、サポートする制度。生活面・学習面・将来の不安など様々な悩みを相談できる環境を整えています。
――学生への指導において印象に残っている出来事はありますか?
大谷:学生が質問しやすい雰囲気を作るのも教員にとって非常に大切であると思います。ある学生は国家試験浪人で大学から予備校へ拠点を変えた後も、メールなどで私に質問をしてくれました。その後、「無事に国家試験に合格しました」と私のところに顔を見せに来てくれた時には本当に嬉しかったです。
――最後に、歯科医師を目指す受験生へメッセージをお願いします。
大谷:歯科医師は病院などで働くだけではなく、私のように、歯科医師でありながら、基礎研究や教育に従事するという大切な仕事もあります。私のこれまでの研究内容は糖や脂質代謝がメインであり、歯科医療とは直接の接点はありませんが、歯科だから歯科の研究をしなければならないということではありません。人体や医療に関わるすべてが研究テーマです。もし研究者を目指したいと考えるのであれば、歯科医師を目指すのもよいと思います。世界レベルの幅広い研究ができますし、歯科医師になることで患者さんの健康に貢献することもできるため、とてもやりがいのある職業だと思います。
――本日はお忙しい中、ありがとうございました!
大谷 准教授からのビデオメッセージ