福岡歯科大学

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森田 浩光 准教授 (現:障害者歯科 教授) インタビュー

「地域医療の架け橋的存在!-周術期口腔医療の地域連携モデルは福歯大から-」
2015.03.31
総合歯科学講座 総合歯科学分野
森田 浩光 准教授(現:障害者歯科 教授)

――先生のご出身は?

森田:宮城県の仙台市になります。今も、父親、母親、姉が住んでおります。

――宮城県ということは東日本大震災の被害はどうでしたか?

森田:家は仙台の街中だったので、ガスとか電気などのライフラインが止まったというぐらいで、幸いにして大きな被害はありませんでした。東日本大震災後には本学からも現在私が所属する総合歯科学分野の廣藤卓雄教授らが宮城県の南三陸町というところに支援に行かれ、その後を引き継ぐ形で、僕も当時の九州大学(以下、九大)の代表として支援に行きました。本当に被害がひどくて破片や瓦礫がとにかくすごかったという印象が強いですね。時期は7月でしたので、被災者の方々は少し落ち着いている状態ではありました。

――東日本大震災の復興はいまだ半ばと言われていますが、今後の復興を願うばかりですね。
先生は仙台市のご出身ということでまさに北国のご出身ですが学生時代は何かされていましたか?

森田:北国出身ですので高校時代にアイスホッケーをしていました。練習中の怪我が原因で一時続けることができなくなったのですが、怪我が回復した後、大学ではクラスメイトの誘いで同じコンタクトスポーツとして楽しめるかなと思いラグビー部に入りました。その後、結局はまた社会人のチームに入りアイスホッケーにも復帰したんです。


九州大学ホッケー部OBとアイスホッケーを楽しむ森田准教授

――スポーツがお好きだとは思いませんでした(笑)意外と体育会系なんですね。
そんなスポーツ好きな先生が九大の歯学部を受験されたきっかけは何だったんでしょうか?

森田:一人暮らしがしたかったというのがありまして(笑)。ただ、歯学部に行きたいというのは高校時代からありましたね。当時は、歯学部に入学できたならば口腔外科がしたいなと漠然と思っていました。何か人の命を救うことでお役に立てたらという気持ちがあって、それなら外科系が一番直結するかなと思っていましたね。

――外科系、口腔外科をと思われていたようですが大学卒業後、薬理学教室の大学院へ進まれているようですが…

森田:実際に大学で講義を受けるうちに、意外にも歯科には医科と共通する分野があるんだなと気付かされたんです。それからですかね、全身と歯科との関わりに興味を持つようになり、大学卒業後は九大歯学部附属病院特殊歯科総合治療部(現在は九大病院全身管理歯科)という有病者の歯科治療を行う部署に研修医として入局しました。2年間の研修修了後に当時のボスの勧めもあり、全身のことをさらに学ぶ目的で九大医学部の薬理学教室の大学院へ進学することにしました。本学の常務理事である北村憲司先生がいらっしゃった教室なのですよ。私はそこで、北村先生のお弟子さんにあたる先生(現在、福岡大学医学部教授)による直接のご指導の下、主に循環器の研究をしていました。大学院卒業後は、指導者の先生のおかげで日本学術振興会特別研究員となることができ、またその先生の推薦でアメリカのバーモント大学で1年半ほどポストドクトラルフェローとして研究に従事させていただきました。


アメリカのバーモント大学留学時(一番右が森田准教授)

――循環器の研究とは具体的にどのような研究をされてらっしゃったのでしょうか?

森田:高血圧、脳血管障害の研究になります。血管平滑筋のイオンチャネルというものについて研究をしていました。その後は、その後は、歯学部に戻って臨床も研究もやりたいという気持ちが強くありましたので、九大病院全身管理歯科に戻りました。そこでは、有病者の歯科治療や周術期口腔医療に携わっていました。全身管理歯科には本学出身の二木寿子先生(本学3期生)がおられ、周術期口腔医療に関していろいろ教わりました。とても感謝しています。本学出身の先生から教えてもらったので、それを本学に還元できればと思っています。

――九大でご活躍されていたなか、本学に来られたきっかけは?

森田:本学で新たに周術期口腔医療を始めるというお話があることを知りました。それは僕がすごく興味があることでした。特に地域連携型の新しいシステムの構築というところにやりがいを感じていましたね。新しいところで新しいシステムを創るというのは簡単なことではありませんし、不安もありました。ですが、とてもやりがいがあることですし、何よりご縁があったんだと思います。

――周術期口腔医療について詳しく教えていただけませんか?

森田:がん治療および心臓の手術、顎顔面の手術において、口腔からの感染を予防するための包括的な歯科治療のことを言います。具体的には、手術前に感染源となるような口の中のものを全部除去してしまって、それから安全に手術や抗がん剤治療、放射線治療を行ってもらうことを目的としています。また術後は手術したところからの感染や人工呼吸器関連の誤嚥性肺炎といったものを予防するために口腔ケアを行う、一般的にはそういった一連の流れを含めて周術期口腔機能管理、周術期口腔医療と言われます。


研究室にてお仕事中の森田准教授

――口の中以外の手術でも口腔内の状態が重要なのですか?

森田:そうですね。たとえば、心臓の手術だと口腔内の菌が心臓の弁に付着して、心内膜炎をおこすことがあります。そのため、そのようなリスクを手術の前に除去しましょうということです。また、最近はさまざまな術後合併症が口腔内の環境と関連しているという研究結果も出てきています。そのため、平成24年から国が周術期口腔機能管理医療というのを制定して大々的に実施するようになったというわけです。

――先生の今後の診療における目標や課題について教えてください。

森田:国立大学は医科が主体となり、その中で患者さんが他職種連携のもとで包括的な治療がされていますから院内完結型のものがほとんどです。しかし、我々、福岡歯科大学が目指しているものは地域連携を重要視していますので、院内の患者さんはもちろんのこと、近隣の歯科のない病院や一般の開業医さんとの連携というのが一番大事だと思っています。もちろん、僕一人の力じゃ無理だと思っていますから、そういう体制を作り上げるというのが僕の理想というか目標ですね。ぜひ地域連携のモデルになるような体制を築ければと思っています。

――地域連携ということで昨年5月より福岡市早良区の福西会病院で訪問歯科診療を行われていらっしゃいますが、どのようなことをされているのでしょうか?

森田:私と高齢者歯科学分野の内藤徹教授を中心とした訪問診療チームが担当し、福西会病院への訪問診療と医療スタッフへの研修を行っており、昨年8月には講演会もさせていただきました。歯科医院への受診が困難な入院患者に対し口腔ケアや粘膜疾患への対応の指導などを実施しています。本取組みは、地域連携センターが中心となり、地域医療機関との連携と地域社会の活性化を目的に行っており、市中の開業歯科医との連携の強化や訪問先の増加、摂食・嚥下障害者に対するリハビリテーションなど、今後さらなる活動の展開を目指しています。


往診用の7つ道具

――ずばり先生の座右の銘は―。

森田:座右の銘は、やっぱりラグビーをやった人はみんなそうだと思うんですけど、“One for all, All for one”ですかね。チームというのは医療においても大変重要ですし、僕自身がチームの一員として医療および研究に貢献したいからこそ大学でずっと仕事をしているんだと思います。

――先生はスポーツがお好きということはお聞きしましたが、趣味やマイブームはなんでしょうか?

森田: 実は高校時代にしていたアイスホッケーをまた始めているんです。といっても本格的なものではなく、おじさんホッケーです(笑)。やっぱり結局はスポーツが好きなんですよね。

――先生は臨床だけでなく学生教育もされていらっしゃいますが、本学の学生の印象はいかがでしょうか?

森田:僕がこちらの大学にきてすごく思ったことは、本学の学生さんは礼儀正しいなと思いました。挨拶はしっかりしているし、明るく、そして学習面でも飲み込みが早く、素晴らしい学生が多いと感じます。ですから、是非、その長所を生かして、社会に必要とされる歯科医師になっていただきたいと思っています。本学が提唱している口腔医学もそうですが、老年治療というかやはり全身が診られる歯科医師を目指してほしいと思います。歯科医師の存在意義がそちら側へシフトしてきているというか、全身があってはじめてインプラントであり、外科系のことも安全に行えるようになると思うんですね。うちは内科、外科など医科系の診療科も揃っているので、全身が診られる総合的な歯科医師になるにはものすごく良い環境にあると思います。

――歯科医師を目指す学生にメッセージをお願いします。

森田:うちの学生さんはすごく素直で、学生さんが持っているポテンシャルは他大学と比較して何ら変わるものはないかさらに大きいと思っています。あとはどう自分を高めていくか、だと思います。最近、アメリカの研究で成功者が共通して持つものとして「グリット」という能力のことが話題になりました。これは才能や知能(IQ)の高さではなく、「物事に対する情熱であり、また何かの目的を達成するためにとてつもなく長い時間、継続的に粘り強く努力することによって、物事を最後までやり遂げる力」のことだそうです。「継続は力なり」、自分で歯科医師になるというモチベーションを強く持って、自分を信じ、忍耐強く反復学習することが、現在は超難関である歯科医師国家試験合格の鍵になると思います。


インタビューをうける森田准教授

――ぜひ6年生に聞いてほしい言葉ですね(笑)

森田:繰り返しになりますが、学業には、近道とか早道とかはありません。僕自身も色々苦労しました(笑)。コツコツとしっかり頑張ってほしいなと思っています。

――森田准教授、本日はお忙しい中、インタビューにご協力いただきましてありがとうございました。

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