橋本 憲一郎 准教授 インタビュー
――先生のご出身はどちらでしょうか
橋本:福岡の久留米市になります。その後、東京で生活をしておりましたが、大学進学の際に、福岡に帰ってきました。
――先生はどうして福岡に戻ってきて福岡歯科大学に進学しようと思ったのですか?
橋本:父親が医者をしていたこともあり、自然と医療の道に進む事を考えていました。そうした時に、たまたま従姉が福岡歯科大学の出身で、しかも口腔外科を専攻していたんです。従姉に福岡歯科大学での話を聞いたり、学内を案内してもらったりしているうちに、「福岡歯科大っていいなあ・・・」という思いが強くなりました。あとは両親の仕事の都合で福岡で進学せざるを得ない状況になって…。福岡歯科大学への進学は色々な巡り合わせだったと思います。今にして思えば、歯科医師は自分の性格に合っていると思いますし、良い選択をしたと思っています。
――福岡歯科大学での学生時代を振り返って、やっておいて良かったことは?
橋本:解剖実習は当時、とても衝撃を受けました。でもそこで学んだことが、現在、口腔外科を専門として診療、指導するうえで役立っていると感じています。勉学以外では、部活動をしておいてよかったと思っています。サッカー部に所属していましたが、今でも当時の仲間との交流は続いていて、意見交換を行ったりしています。メンバーには開業医もいたり、研究者もいたり…色々な視点の意見を聞けて、視野が広がります。
――進学のきっかけにも「口腔外科」が出てきましたが最初から興味を持たれていたのでしょうか?
橋本:父親の影響からか「手術」という言葉には何となく興味を持っていましたが、具体的に口腔外科を専攻したいと思うようになったのは大学4年生くらいからです。 口腔外科は「外科」とついているとおり、メスを使って移植手術なども行います。繊細な技術はもちろんのこと、精神的な強さも求められます。しかし、その分得るものも大きいと思います。私は、口腔外科の中でも口腔腫瘍という口の中にできる腫れ物を専門としています。保存や歯周病、補綴(被せ物、入れ歯)のようなメジャーな診療科ではありませんが、口腔外科は患者の皆様を支える「縁の下の力持ち」だと私は考えています。
――口の中にできる腫れ物、どんなものがあるのでしょうか。
橋本:腫れ物は良性のものもあれば悪性のものもあり、悪性のものは「口腔がん」と言われます。口腔がんが最も発生しやすいのは舌で、「舌がん」と呼ばれます。
診療では、どの手術方法が患者さんに対してベストなのか、また舌を切除する場合、どのように再建するのかを考え、患者さんの社会復帰のサポートを行ったりします。
――舌を再建したりするのですね!どのようにしてされるのでしょうか?
橋本:患者さんの皮膚を使って移植手術を行っています。患者さんの術後の生活を考えて手術をするのは難しいのですが、最近ではデジタル技術を使用した手術方法が出てきました。例えば舌を切除する場合、どこまで切ればよいのか、といった切除範囲や、顎の骨を手術し、骨を移植するなど、体のどの部分の骨を使って行えばよいかといった事をシミュレーションする事ができます。手術前にあらかじめシミュレーションができることで手術時間の短縮にも繋がります。また、手術時間が短くなることで患者さんの負担が軽減され、完治も早くなるという好循環が生まれます。
――次に学生教育についてお聞きしたいのですが、先生が授業で心がけていることは何ですか?
橋本:学生にはより多くの事を吸収してもらえるようにわかりやすい講義を心がけています。例えば、ただ用語を暗記するのではなく、その用語を使う背景を理解し、状況をイメージできるようにする。言い換えるなら「点と点を紐づけして、線になるような指導」をするようにしています。また、テキストを作って配布していますが、文書だけでは伝わりにくいと思うので、自分でイラストを描いて加えています。絵はそんなに得意じゃありませんが(笑)
――「得意」といえば、先生はかなり上級のマラソンランナーだという噂を聞いたのですが…
橋本:それほどでもありませんよ。でも、ランニングは一番の趣味です。「縁の下の力持ち」には体力が必要ですから(笑)
定期的に走っていて、普段は自宅近辺の室見川でよくランニングをしています。これまで東京や熊本、地元の久留米などのマラソン大会に出場しました。フルマラソンのベストタイムは今のところ3時間15分です。いずれはフルマラソン(42.195km)よりも長い距離を走るウルトラマラソンも挑戦したいと思っています。
多忙な中でも時間を見つけてトレーニングに励んでいるとの事
――まさに韋駄天ですね(笑)
では最後に、歯科医師を目指している方々に向けてメッセージをお願いします!
橋本:単純に歯だけを見て診療するのではなく、口腔全体を見て診療する事が出来る歯科医師を目指してほしいと考えています。例えば口の中には歯だけでなく、舌もあれば、そこに流れてくる唾液もありますよね。そういった歯以外の部分の知識もより深く勉強しておくと、診療や研究の幅が広がります。口腔全体の機能、起こりうる症状をしっかり学んで「口腔の専門家」になって欲しいですね。
福岡歯科大学ではそんな「口腔の専門家」になれる環境と設備が豊富に揃っていますので、是非、福岡歯科大学でしっかり学んでください。
――橋本先生、ありがとうございました!
橋本 准教授からのビデオメッセージ