加倉 加恵 准教授 インタビュー
—他科連携でより大きな安心を— 」
――先生のご出身はどちらですか?
加倉:出身は広島県で、広島市内で育ちました。マツダスタジアムという野球場が近くにあるので、野球でも観に行ってみようかな…と思うことはあったのですが、チケットがいつも売り切れていて結局まだ観に行けていない状態です(笑)
――先生は福岡歯科大学のOGですが、本学を志望したきっかけを教えてください。
加倉:父が歯科医師で、幼少期から仕事ぶりを見ていたこともあり漠然と歯科医師になりたいと思うようになりました。そして、父が福岡出身ということや、その時すでに姉が福岡の大学に進学していたという縁もあって、自然と福岡で進学するということとなりました。
――当時の福岡歯科大学での学生生活はいかがでしたか?
加倉:今は地下鉄七隈線も開通して便利になっていますが、当時はそういった移動手段が無かったので通学にかなり時間がかかっていましたね。
あとは、実習室の場所は私が学生のころから変わらないので、設備こそ新しくなりましたが、実習室に入ると今でも学生時代を思い出します。実習で同じ班の同級生たちと仲良くなって、休日など一緒に遊んだりしていたことまで思い出してしまいますね。
――先生は大学卒業後、本学の大学院に進学されていますが、そのきっかけは何ですか? また、先生が専攻である口腔インプラント学を学ぼうと思われた理由を教えてください。
加倉:大学院は父親の勧めもあり進学しました。当時はまだ口腔インプラント学が現在ほど浸透していたわけではなかったからでしょうか、大学の授業でも少々学ぶ程度でしたので、「もっと深く学んでみたい」と思うようになり、大学院では口腔インプラント学を専攻することとなりました。
――当時の口腔インプラント学分野はどういう印象でしたか?
加倉:当時は口腔インプラント学を専攻している大学院生が少なく、しかもまだ新しい分野で分かっていない事が多くあったので、質問や意見が絶えず飛び交って日々多くの議論が展開されていました。そのおかげかチームとしての一体感や活気があったと感じています。
――大学院を修了後、先生が福岡歯科大学に教員として残ったきっかけは何かありますか?
加倉:より深く学べる環境はどこかと考えた結果、医科と歯科の病院もあり、臨床面、研究面においても多くを学べる環境があったことから、大学に残って口腔インプラント学について学ぶことにしました。また、当時の同分野の教授だった松浦正朗先生(現:福岡歯科大学名誉教授)や城戸寛史先生(現:口腔インプラント学分野教授)にお世話になったことも大きいですね。技術的な面だけでなく人間形成の面でも学ばせていただいたので、歯科大で働きながらもっと成長していきたいと思うようになりました。
――学生時代から現在まで福岡歯科大学で過ごされている先生から見た本学の魅力は何ですか?
加倉:学生さんと教員の距離が近いところですかね。特徴的な制度としては助言教員制度があるのですが、自分が助言教員になってみると、学生さんと密な連携が取れていると実感しました。あとは実習設備がとても整っていると感じています。新病院が開院し、機能面も今まで以上に充実しましたし、学生さんは新鮮な気持ちで臨床実習に取り組んでいるのではないでしょうか。
――次に診療についてお聞きします。口腔インプラント科の特徴を教えてください。
加倉:口腔インプラント科は、歯周病やむし歯治療などを終えられた患者さんが、今後の治療法の一つとして受診される診療科です。その治療は、インプラントを埋入するだけでなく、入れ歯やブリッジ等の治療、残っている歯の一般的な歯科治療も含まれます。また、インプラント治療は外科処置(手術)を行いますので、外科的手技や全身管理を身につける必要があります。
――インプラント治療というと最先端の技術という印象がありますが、歯科治療のオーソドックスな技量も必要とされるんですね。
加倉:ええ、そうですね。歯科医師にとっては様々なパターンの症例を経験することになると思います。でも他科との連携の機会が多く、例えば、口腔外科と連携して腫瘍や外傷による顎骨切除後の歯の再建治療や、矯正歯科と連携して歯列矯正を終えられた患者さんへのインプラント治療等も行っています。このような他科との連携は大学病院のメリットと言えますので、大いに活用してより安全で患者さんに安心してもらえる高度な治療が提供できるように心がけています。
――新病院が開院しましたが、インプラントの診療面ではどのような変化がありましたか?
加倉: 処置室が広くなり、患者さんにとっても歯科医師にとっても診療が快適になったと思います。
あとは、手術室にナビゲーションシステムが導入されたことで、より安全性の高い手術を行うことも可能となりました。また、このナビゲーションシステムは教育面においても有用なツールであり、学生さんや研修歯科医の指導にも非常に役立っています。
<新しく導入されたナビゲーションシステムと手術の様子>
――先生が診療する際に心がけていることはありますか?
加倉:患者さんにリラックスして診療を受けてもらえるような環境づくりを行うとともに、インプラント治療を受けてもらうにあたり、通常の歯科治療とは異なる点を理解していただけるように丁寧に説明することを心がけています。インプラント治療は長期間で、外科的侵襲をともなう治療となります。治療後にインプラント治療特有の歯周病(インプラント周囲炎)を発症する可能性もあるので、その予防として、適切なセルフケアと定期的なメインテナンスが重要であることを治療前に十分に理解していただくよう患者さんにお願いしています。
――学生教育について質問させてください。
先生の学生時代と比べて今の学生さんは先生から見てどう映っていますか?
加倉:主な変化というと学習スタイルですね。私が学生の頃は分厚い国家試験対策の参考書を数冊抱えた状態で教室間を移動したりして、勉強をするのにも広いスペースの確保が必要だったのですが、今の学生さんはタブレットやスマートフォンに参考書のデータを保存しておいていつでもどこでも勉強に取り組んでいるという姿を目にします。荷物も最小限に抑えていて、どことなくスマートに感じますね(笑)
――そんなどこかスマートな学生さんたちに口腔インプラント学について授業で教える際には、どんなところに気を付けていますか?
加倉: 口腔インプラント学の授業は第4学年から本格的に始まるのですが、講義に関してはなるべく実際にあった症例の写真などを活用し、学生がイメージしやすい内容になるよう心がけています。そして第4学年の後半から第5学年にかけて行われる実習では実際の診療を想定し、「何故治療をしないといけないか」という理由を考え、治療の流れやスケジュールを計画した後、模型を使ったインプラントの埋入を体験させます。こうした実習を通して診療での一連の流れを学生さんが理解できるよう心がけて授業を行っています。
学生さんから「インプラントの授業が分かりやすかった。実習を通して多くのことを学ぶことが出来た」といった授業アンケートでの評価が返ってくるとやりがいを感じます。特に実習は学生により多くのことを学んでもらうためにどの道具や歯科材料を揃えればいいかといった準備に時間をかけていますので、そういった声をもらえるのは嬉しいですね。
――教育といえば、緊急事態宣言が発令されていた際は、遠隔授業となりましたが、遠隔でも教育効果を上げるために工夫されていたことなどありますか?
加倉:対面授業は聞いている学生の反応が分かるので、自分の説明が分かりにくかった場合はその場で補足説明が出来ていたのですが、遠隔授業は学生の反応が分からないので資料を作成するのが大変でした。文章量が多すぎると学生もわかりにくいと思ったので、ある程度重要なポイントを絞ってコンパクトな資料を作成することに注力しました。
――最後に、歯科医師を目指す受験生に向けてメッセージをお願いします!
加倉:歯科医師になるまでには多くのことを学び、最終的には国家試験に合格する必要があるので、自ら積極的に学ぶ姿勢も必要ですし、勉強に時間を多く割くことになるかと思います。しかし、国家試験に合格し、学んだことを活かして患者さんから感謝の言葉をいただいた時は何事にも代えがたい喜びを感じます。歯科医師というのは苦労して勉強するだけの価値がある魅力的な仕事だと思います。福岡歯科大学には学生を全力でサポートする先生や先輩たちもいますし、最新の設備を活用した学習環境が備わっていますので、皆様ぜひ本学で歯科医師を目指しましょう!
――本日はありがとうございました!
加倉 准教授からのビデオメッセージ