大星 博明 教授 インタビュー
☆大分別府育ち。釣に行っても釣れたことはない?“心優しい”内科医。趣味はテニス、映画・音楽鑑賞で、青年時代は“ロック少年”だったいう大星教授にお話を伺いました。
九州大学医学部をご卒業後、米国アイオワ大学内科・循環器科に留学。帰国後は九州大学医学部にて臨床・研究・教育の道を歩まれ、九州大学病院、腎・高血圧・脳血管内科講師を経て、2009年4月から本学教授として勤務されています。
――内科医を目指された理由は?
大星:高校時代は理科系が好きだったことも一つの理由ですが、人の役に立つ仕事に就きたいと思い医学部に入学しました。研究の道もありましたが医師になることを選択し、特に、患者さんが受診する時の入口の役割で、かつ全身を診療することができるというイメージがあって、内科医を目指しました。研修医当時は、広い範囲の診療ができる内科で臨床経験を重ね、それから自分の専門を決めようと思い、毎日頑張っていましたね。
インタビュー中の大星教授
――ご専門は何ですか?
大星:脳循環に関することで、病気としては「脳卒中」が専門です。脳卒中は脳の病気ですが脳血管障害とも呼ばれ、血管の異常により血管が破れる、詰まるといったタイプの病気です。危険因子は高血圧、糖尿病、悪玉コレステロールが高いことと心房細動。特に血圧と心房細動に注意しなければいけません。この脳卒中ですが、今でも、世界でもそうですが、ちょっと難しい立ち位置にあるんです。
――どういうことですか?
大星:脳卒中は血管の障害に起因する病気で、神経が悪くて起こる病気ではありません。神経の病気には、例えばパーキンソン病とか変性疾患など、徐々に悪くなっていくタイプも多く、時間を争うと言う意味で循環器内科的な脳卒中とは性質が違います。欧米でも脳卒中は“シンデレラ病”とも呼ばれ、シンデレラとは“灰にまみれた少女”という意味ですが、いじめられ、疎外されていたように、脳卒中も有効な治療法がなかったことと、血管内科、神経内科、脳外科の狭間の立ち位置で邪険に扱われて、学問と臨床が体系的に進められて来なかったようです。
――先生のこれまでの功績等を教えてください。
大星:グループでやってきたことですが、どうして脳は虚血(脳に血液が流れなくなる状態)になると弱いのかということに関するメカニズムを探って、色々な新しい知見を出してきました。例えば、脳が虚血になった時には神経細胞の神経伝達物質が異常に出てくるということ、その機序に特殊なチャネル(イオンの通る穴)が関与していることを世界で最初に発表しました。また、最近では免疫反応の役割に関した報告が評価され、特許申請も行っています。これらの研究成果は、新薬の開発といった臨床にも応用されていくことと思います。
――留学先でどのような研究をされたのですか?
大星:アメリカのアイオワ大学で、循環器内科なのに脳循環を研究している研究室に留学しました。留学してから始めたことは、遺伝子を使って治療する遺伝子治療です。当時、別のグル―プが肺の遺伝性疾患に関する遺伝子治療を始めていたので、そのグループと協力して脳卒中に関する遺伝子治療の研究を任されたことがきっかけでした。正常な遺伝子を実際に生きている動物に投与して、脳血管で働かせるということに世界で最初に成功し、アメリカの循環器系学術雑誌「サーキュレーション・リサーチ」の巻頭を飾りました。
――その他に留学中の思い出は?
大星:日本人の医師は病院から離れられない職業で、常にポケットベルを持たされて救急の際は呼び出しを受けていましたが、留学していた3年弱はそれがなかったので、私と家族にとっては大変貴重な時間でした。その他、アイオワ州は中西部の田舎町風なのでのどかな生活を過ごせたことと、学会の後や夏休みに訪れたグランドサークルなどのナショナルパーク、ロッキー山脈、グランドキャニオンなどの大自然が印象深く残っています。
――医師として大事にしていることを教えてください
大星:単純な病気に見えて難しい病気や大変な病気が隠れていることがありますので、常に見落としをしないように気を付けることと、自分がカバーできる領域とそうでない領域を判断することが一番大事なことだと考えています。内科医としてひと通り診療できて、その中で人から紹介して貰えるような専門性を持つことが大学時代から教えられてきたことであり、目指している内科医としての理想像です。
「全身をgeneralに診る」を
モットーに診療しています
――本学が推進する口腔医学について、医学的にどう思われますか?
大星:口の中が全身にとって大切という意味で大変重要な考え方であると思います。歯周病と糖尿病の関係がマスコミでも取り上げられ始めていますが、それだけではなくて、例えば脳卒中による嚥下障害が原因で肺炎になりますが、その予防に口腔ケアは大事ですし、睡眠時無呼吸の治療への関わりにおいても重要です。また、別の観点で言えば、眼科のご子息が将来後継ぎになろうという時も、ひとまず医学をひと通り勉強して最終的に眼科医になるように、歯科に従事される方もそういう観点で医学一般の基礎を修得することは大切であると思っています。
――最後に、本学に対する思いをお聞かせ下さい。
大星:本学は口腔医学の提唱をはじめ、先端科学研究センターや再生医学研究センター等においても世界に冠たるプロジェクトを進めていると思います。また、西日本では唯一の私立歯科大学と言う意味でも、プライドを持てる環境にあるでしょう。“意志あるところに道は開ける”僕はそういう言葉が好きですが、そんな気持ちを大切にして、大学に愛着を持ち、誇りを持って、教育、研究、診療の各方面で尽力していきたいと思っています。
歯科医師を目指されている皆さん、このように恵まれた環境にある本学で一緒に頑張りませんか!口腔専門医として社会に貢献しようという高い志をもった皆さんを心から歓迎します。
皆さん一緒に学びましょう!
――色々とお話いただき、ありがとうございました。