池邉 哲郎 教授 インタビュー
――大学の頃はどういう学生さんでしたか?
池邉:野球部に入っていたので野球部の練習と、それから講義はちゃんと出ようという性分だったので、大学行って講義を聴くか野球の練習をしているかどちらかという感じでした。
――教養課程で印象に残っている講義とかありますか
池邉:教養部の時代で印象に残っているのは、西洋文学。授業でドストエフスキーの話があって、それでドストエフスキーが好きになって、ずっと読んでました。
教授室にてインタビュー中
――専門に進んでからの授業ではどうでしょうか?
池邉:やっぱり口腔外科は面白かったですね。それから病理学や細菌学や生化学が面白かったですね。生命科学は口腔外科以上に好きだったかもしれません。
――学生さんにお勧めしたい本はありますか?
池邉:真面目な本からいうと『カラマーゾフの兄弟』で、少し砕けたので言うと『竜馬がゆく』とか『坂の上の雲』とかですね。
――歴史もお好きでしたね。尊敬する歴史上の人物とかいますか?
池邉:若い頃は坂本龍馬でした。段々年が行くと大分の先達の福澤諭吉とかですね。科学の世界ではダーウィンです。
――先生は大分出身ですが、やはり同郷ということで福澤諭吉というのは特別な存在なのですか?
池邉:ああいう時代に色んなことがちゃんとわかっていた人だなあと思いますよね。江戸時代幕末で育った人がいち早く西洋の経済から社会学から色んな知識を取り入れて日本に導入しようとしたわけです。しかも大臣とか総理大臣とかになろうじゃなくて学校を建てて民間で人を教育しようとか、そういうのはすごいなあと思います。
教授室のパソコンに向かって
――その後進の教育に関して心掛けていることとかありますか?
池邉:心がけているのはまあ、エンカレッジすることですね常に。要するにポジティブ思考で勇気づけることですね。どっちかというと技術的なことというよりはもう精神的なことの方が今は重要かなと思っています。
――池邉先生は、授業などで学生さんにとても人気があると聞いたのですが。
池邉:違う、違う(笑)。口腔外科はやっぱり国家試験の中で問題数が多いし、口腔外科をある程度やっていかないと他の分野でも点数がとれないということがあるからだと思いますよ。
――口腔外科はいろいろな意味で大切だということですね?
池邉:それにやはり学問としておもしろいと思いますね。いろいろな種類の患者さんがいますし、メスをふるって手術をしますから。12時間以上、手術することもあるんですよ。手術手技の基本は外科と同じです、つまり医学です。
それと僕が最近言っているのは「口腔内科」ですね。昔からあるんですけど、最近特に口腔外科学会の中でも口腔内科ということを言い始めているんです。
診療室にて
――「口腔内科」ですか?
池邉:口腔内科というのは、簡単にいうと、手術せずに治せる病気もいっぱいあるんで、それに対して投薬したりとか、そういうことで治療しようということです。
もちろん、口腔内科というと普通の内科と同じように診断というのが大切になるんですよ。口の中にできる病気の原因が他の臓器にあったりすることがあるんで、そういうのを診断をしないといけない。口の中だけ治療していても、原因がたとえば大腸だとかそういうところにあれば、いくら口の中を治療していても仕方ないわけで、そういうのは大腸に原因があるいうことを診断しないといけない。そういう口の中の病気を、診断をして、手術以外の方法で治療するという口腔内科というわけです。
これは「口腔医学」に非常に通じるんで、僕はそれを重視したいなあと思ってます。
――最後に、口腔外科に興味を持たれている若い人に一言。
池邉:口腔外科と口腔内科は、まあ多分、ベースというか、基礎ですね。本当は、口腔外科を修めて保存、補綴に行くとか、本当はそっちの方がいいのかもしれないと思うんですよ。医学を修めて口腔外科をやって、保存、補綴とか、小児歯科、矯正とかのほうがいいのじゃないかと思いますね。スポーツするときにはまず体力をつけて、それからテクニックを習いますよね。それに喩えると、口腔外科は体力の方だと思います。
――本日はお忙しいところ、ありがとうございました。
池邉:どういたしまして。
池邉教授からのビデオメッセージ