都築 尊 講師(現:教授) インタビュー
――先生のご出身はどちらですか?
都築:出身は愛媛県の八幡浜市です。田舎ではありますが、漁業の盛んな港町ですね。そこでのびのびと育ちました。とてもいいところですよ。
――先生は、本学のご出身ですが、なぜ愛媛から福歯大へ?
都築:四国の人は大阪方面の大学に進学することが多く、僕も大阪か福岡か迷っていました。でも、当時、取り寄せた福歯大の資料の中に大学紹介のビデオが入っていて、それがちょっとドラマ仕立てになっていたんです。とても手が込んでいて、楽しそうな大学だなぁと思いました。それ以外の資料も分かりやすく、充実していました。それで福歯大を選びました。
――なぜ歯科医師の道を選ばれたのですか?
都築:僕の父も、祖父も歯科医師でした。小さいころから診療をしている父の後ろ姿を見ていたため、とても身近な職業でした。それで、歯科医師になろうと思いました。
――福岡歯科大学では、どのような学生生活を過ごされたのですか?
都築:中学時代からずっと卓球をしていたのですが、当時の僕はすごく色白で・・。だから、日焼けをしたくて大学ではヨット部に入部しました。
――日焼けをしたくてヨット部へ!?
都築:そうです。結果、日焼けはしましたが、今度はビール瓶みたいに黒くなってしまって・・。でも念願は叶いましたね。
ヨットは、優雅なイメージがあると思いますけど、実際は二人乗りのレース競技で、すごく過酷な世界です。大学時代の競技大会でとても風が強い中でのレースがあったんですが、そのとき高波に乗ってしまって、船が海面に突き刺さるような角度で進み、すごく怖かったことがありました。でもそれを何とか乗り切り、その大会では準優勝しました。学生時代のいい思い出ですね。いまでもヨット部の後輩に指導は続けています。
――他にも何か趣味はありますか?
都築:いろいろや っていますよ。水草を育てるアクアリウムや自転車、アコースティックギターをしていますね。写真を撮るのも好きです。最近ちょっといいカメラを購入して、子どもたちの写真を撮っています。
「ギター歴は5年です。たまに人前で披露することもあります。はずかしいんですけどね。(笑)」
「自分で設計し、作り上げたアクアリウムです。疲れて帰っても、これを見ていると癒されますね。」
――本当に多趣味なのですね。では、先生の専門分野について教えてください。
都築:補綴の有床義歯(入れ歯)学分野です。
――有床義歯(入れ歯)学を選ばれたのには、何か理由があるのですか?
都築:さきほどもお話ししましたけど、僕の地元は田舎町で、高齢者が多いんです。高齢者が多いということは、入れ歯の将来的なニーズも高いだろうと思って有床義歯にしました。あと、学生時代のヨット部の顧問が当時の有床義歯の教授だったことも一因ですね。
――入れ歯というと昔からあまり変わらないイメージがありますが?
都築:大昔の入れ歯は、木を彫って作っていたんですよ。歯の部分は、動物の骨とか、亡くなった方の歯、他には石を削って作っていました。今のような、プラスチックで作る技術が確立されたのは60年ぐらい前です。最近では、入れ歯の歯肉部分のプラスチックが柔らかく、見た目もよくなって本物の歯肉に近くなってきています。ノンメタルクラスプデンチャーといって、金属を全く使わない入れ歯や、コーヌステレスコープデンチャーというはめ込み式の入れ歯など、審美性を重視した入れ歯があります。入れ歯も日々進歩しているんですよ。
また、患者さんのからだというのは常に変化していますから、その変化にも対応しなければいけません。入れ歯を入れて終わり、ではないんですね。入れ歯は、患者さんの体の一部、つまりは人工臓器ですから。
――診療をされる中で、心がけていることは何ですか?
都築:今後は高齢者がさらに増え、それに伴って入れ歯のニーズも増えていきます。入れ歯をいれると、もともと歯があった時のようにはいきませんが、自分で噛めるようになります。噛めるということは心の満足にもつながりますし、実際、体にも力が出るようになります。また、最近では、お口の衛生状態がよくないと、誤嚥性肺炎などのからだの病気を引き起こすこともわかってきています。歯を失った人が、いい入れ歯を長く使って、いつまでも健康でいられるためにも、かかりつけ医として責任をもって患者さんをずっと診ていくという姿勢が大事だと思っています。
――先生は福歯大の卒業生ですが、学生時代と比べて今の大学はいかがですか?
都築:実習室も改装されて綺麗になりましたし、最新の設備が整っていると思います。また、学生の評価の方法もずいぶん変わりました。逆に、教員と学生の距離がすごく近いというのは昔から変わっていませんね。今は、同窓生の2世も入学する時代になって、同窓会の結束もますます強くなっています。学生と教員や、同窓生の結束が強いというは、福歯大のいい伝統だと思います。
――評価法の変化というのは、具体的にどのようなことですか?
都築:たくさんありますが、最近導入されたiPadを使用した臨床実習評価システムはとても効果的だと思います。このシステムの導入により、自分が学生のころと比べて実習の際の目標が明確になったと思います。臨床の現場における一つ一つの課程がどのような到達目標のために必要かということが、学生にも教員にも明確に分かるようになりました。
――どういうシステムなんですか?
都築:文科省のモデルコアカリキュラムに基づいて評価項目を設定し、同意が得られた患者さんにお願いして診療をさせていただき、指導医が横について、各項目の達成度を判断します。それをリアルタイムにiPadに入力をするというシステムです。学生も、自分の到達度をネット上で随時確認できるため、モチベーションも上がっているようです。
――教育のご担当は?
都築:おもに4年生の基礎実習と5年生の登院実習です。基礎実習では、全部床義歯と部分床義歯の作製を行います。
熱心な指導に学生も真剣
――実際の診療では、入れ歯の作成はほとんど歯科技工士さんにお願いしますよね。でも、学生が入れ歯の作製実習をしなくてはいけないのはなぜですか?
都築:患者さんは入れ歯と長く付き合っていくことになります。入れ歯はプラスチックなので変化はありませんが、患者さんの体は常に変化していますので、歯科医師にはその変化への対応力も求められます。でもそれは、歯科医師一人の力では限界があるんですね。今の補綴物というのはすごくクオリティーが高くて、訓練を積んだ人でないと作れないようなものばかりです。一回でも補綴物を作った経験がないと、歯科技工士さん達の気持ちが分からないし、話ができません。同じ目線で話ができるようになるためには、補綴物の作製を経験する必要があるのです。ホームドクターとして長く患者さんのお口の健康管理をしていくためには、チーム医療の大切さも知る必要があります。そういった意味でも、補綴実習はとても大事です。将来歯科医師になったとき、歯科技工士さんと一緒に仕事をしていくうえで、とても重要な実習だと思います。
――最後に、先生が学生を指導する際に心がけていることを教えてください。
都築:僕は、福岡歯科大学が大好きなんです。その大好きな母校で働けるということは、すごく誇りです。今は学生を指導する立場にありますが、同じ場所で教えられる立場にいたので、学生の気持ちがよくわかります。自分が学生時代に受けてよかった教育を学生にするように心がけています。
――本日は、お忙しい中ありがとうございました。
都築講師(現:教授)からのビデオメッセージ