2026.09.08 【研究成果】歯周病が引き起こす認知機能障害のメカニズムを解明~免疫細胞が口から脳へ移動して認知機能を障害する「口腔-脳連関」を発見~
福岡歯科大学 口腔歯学部 感染生物学分野の田中 芳彦 教授(口腔医学研究センター リーダーを兼任)、岸川 咲吏 助教、永尾 潤一 准教授らの研究グループは、歯周病原因菌であるPorphyromonas gingivalisによる歯周病が、不安様行動や認知機能障害を引き起こすメカニズムを明らかにしました。
本研究成果は、2026年8月28日(金)(日本時間)に米国の科学雑誌「Cell Reports(セル・レポート)」(Cell Press)に掲載されました。
本研究のポイント
- 歯周病の原因細菌(Porphyromonas gingivalis)の感染が、不安様行動や記憶・学習障害といった認知機能障害を引き起こすことをマウス実験で実証しました。
- 歯周病の炎症によって活性化した免疫細胞が頚部リンパ節を経由して脳へ移動し、認知機能障害を引き起こすことを明らかにしました。
- 抗インターロイキン(IL)-17A抗体・抗CCL20抗体・抗TCRγδ抗体の投与により、不安様行動と認知機能障害がいずれも改善することを確認しました。歯周病に関連した認知機能低下の予防・治療につながる新たな標的として期待されます。
概 要
歯周病は国内で多くの成人が罹患する慢性炎症疾患の感染症であり、近年では認知機能低下・認知症のリスク因子として世界的に注目されています。しかし、歯周病が脳の機能にどのような免疫学的メカニズムで影響を与えるか、これまで明らかになっていませんでした。
本研究グループは、独自のPg誘導性歯周病マウスモデルを用いた実験により、Pgの経口感染によって歯周病を発症したマウスが、不安様行動(オープンフィールド試験・ビー玉埋め試験)や空間記憶・物体認識記憶の障害(物体位置認識試験・物体認識試験・バーンズ迷路・放射状迷路試験)を示すことを確認しました。さらに、これらの認知機能障害の原因として、IL-17Aを産生する免疫細胞のγδ T細胞が歯周局所で活性化した後、頚部リンパ節を経由し、CCL20/CCR6シグナル経路を介して脳の大脳皮質へ移動・蓄積しており、IL-17A/IL-17RAシグナルの活性化によって記憶に関わる神経回路に障害が生じることが示唆されました。また、歯周病原細菌の感染により血液脳関門(BBB)の透過性が亢進することも確認され、γδ T細胞が脳内に侵入する経路として重要であることが示されました。
抗IL-17A抗体・抗CCL20抗体・抗TCRγδ抗体をそれぞれ投与したところ、いずれの場合も不安様行動および認知機能障害が有意に改善されました。これらの結果は、IL-17A産生γδ T細胞やCCL20/CCR6経路が歯周病に関連した認知機能低下に対する新たな治療標的となる可能性を示しており、将来的な予防・治療法の開発に期待が寄せられます。

歯周病が引き起こす認知機能障害の仕組み
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