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2025.10.28 【研究成果】新たなパンデミックの脅威となる真菌症の仕組みを解明 〜カンジダ・アウリス感染症の治療薬開発に期待〜

福岡歯科大学 口腔歯学部 感染生物学分野の田中 芳彦 教授(口腔医学研究センター リーダーを兼任)、豊永 憲司 助教らの研究グループは、新たなパンデミックの脅威となるカンジダ・アウリス真菌(カビ)による感染症の仕組みを解明しました。

 

この研究は科学研究費助成事業ならびに日本医療研究開発機構(AMED)の免疫アレルギー疾患実用化研究事業の病態解明研究領域と新興・再興感染症研究基盤創生事業の多分野融合研究領域の支援のもとで行われたもので、その研究成果は、2025年10月25日に米国の科学雑誌「iScience(アイサイエンス)」(Cellプレス)オンライン版に掲載されました。


 

本研究のポイント

  • COVID-19のパンデミックから立ち直りつつある中、日本ではまだ聴きなれない新たなパンデミックの脅威としてカンジダ・アウリス真菌による感染症が世界中で警戒され始めています。
  • カンジダ・アウリス真菌が血液中に感染すると、Card9蛋白質がないマウスでは白血球に細胞死がおこり真菌を排除できず、腎臓で感染が重症化して生存できなくなることを発見しました。
  • この動物実験系を活用して、パンデミックを防ぐ新たな抗真菌薬の開発が期待されます。

 

概 要

 カンジダ・アウリス真菌は患者の皮膚や腸などに常在しており、加齢や病気、薬で免疫力が低下すると真菌感染症を起こし、抗真菌薬による治療が施されます。環境中に長く生存し、血液中に感染する(真菌血症:※2)と約30%が死に至るとされています。日本ではまだ重症化した例が少ないため危険な感染症として注目されていませんが、インドや南アフリカ、ヨーロッパなどで抗真菌薬の効かないカンジダ・アウリス真菌による感染拡大が報告されています。そのため、米国 疾病予防管理センター(CDC)では「もっとも優先度の高い脅威」に位置付けて警告しています。インバウンドの増加が著しい今日の日本において、抗真菌薬の効かないカンジダ・アウリス真菌が海外から流入する可能性が高まっています。

 本研究グループは、カンジダ・アウリス真菌(の中で最も病原性の低い株)をマウスの血液中に感染させたところ、真菌の排除に重要なCard9蛋白質がないマウスでは白血球(好中球)のアポトーシスによる細胞死がおこり真菌を排除できず、腎臓で感染が重症化して生存できなくなることを発見しました。このような病原性が低く抗真菌薬が効くカンジダ・アウリス真菌の感染によって生存できなくなるマウスが初めて見つかりました。試験管内でカンジダ・アウリス真菌に効果が高いとされる抗真菌薬の中に、生体内ではあまり効果がない抗真菌薬があることも分かりつつあります。今後、日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受けて、重症化をおこす免疫学的解明、およびパンデミックを防ぐ新たな抗真菌薬の開発、に加えて抗真菌薬とは異なる機序の治療法の創出へ展開していく計画です。

カンジダ・アウリス真菌症の重症化の仕組み

 

本研究の詳細はこちら(pdf)


<研究に関するお問合せ>

福岡歯科大学 口腔歯学部 感染生物学分野 教授 田中芳彦

Mail: tanakayo■fdcnet.ac.jp

 

〈報道に関するお問合せ〉

福岡歯科大学 企画課企画広報係

TEL:092-801-0420

Email:kouhou■fdcnet.ac.jp

 

※ご連絡の際は、■を@へ変更してください。