2023.01.18 【研究成果】エナメル上皮腫による顎骨の吸収機構を解明
福岡歯科大学病態構造学分野の吉本尚平講師(口腔医学研究センター研究員を兼務)、岡村和彦准教授、同大学総合歯科学講座の森田浩光教授、同大学口腔腫瘍学分野の平木昭光教授らの研究グループは、エナメル上皮腫でのRANKL発現はサイトカインであるIL-6を介して腫瘍周囲の線維芽細胞からなされることを明らかにしました。
今回明らかにしたエナメル上皮腫による線維芽細胞を介した破骨細胞形成機構は、エナメル上皮腫の治療の上で顎骨吸収を抑制するための新たな標的となる可能性が考えられます。
本研究成果は、2023年1月17日に米国科学雑誌「Laboratory Investigation」においてオンライン公開されました。
概 要
エナメル上皮腫は顎骨内で発生する良性腫瘍です。歯に関連する腫瘍のひとつであり、その中で最も頻度が高い腫瘍とされています。若年者での発生が多く、良性腫瘍ですが、顎骨を溶かしながら増大していくという特徴を持っています。骨を溶かすことは主に破骨細胞によって行われます。破骨細胞の形成にはRANKLというタンパク質が必須であることが知られていますが、エナメル上皮腫でのRANKL発現の機構は明らかではありませんでした。
手術により摘出されたエナメル上皮腫の組織においてRANKLの発現を解析したところ、エナメル上皮腫の腫瘍細胞ではなく周囲の線維芽細胞での発現を認めました。さらに、エナメル上皮腫細胞と線維芽細胞を一緒に培養すると、線維芽細胞においてRANKL発現が起こり、破骨細胞の形成も見られました。エナメル上皮腫細胞と線維芽細胞との間を取り持つサイトカインを検索したところ、IL-6の関与が考えられました。そこでIL-6の働きを阻害する薬剤(抗IL-6受容体抗体)を加えたところ、エナメル上皮腫細胞と線維芽細胞による破骨細胞の形成が抑えられました。
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福岡歯科大学 病態構造学分野 講師 吉本 尚平
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