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2022.09.07 【研究成果】腸でおこる歯周病の発症と重症化の仕組みを解明〜腸内細菌をターゲットとした歯周病の予防と治療への応用に期待〜

福岡歯科大学 口腔歯学部 感染生物学分野の田中 芳彦 教授(口腔医学研究センター リーダーを兼任)、永尾 潤一 講師らの研究グループは、腸内細菌の影響を受けて腸で歯周病原細菌に応答するようになったヘルパーT細胞が歯周病の発症と重症化を引き起こす仕組みを解明しました。
今後の検証により、腸内細菌をターゲットとした薬剤や整腸剤による新しい歯周病の予防法と治療法の開発が期待されます。


本研究成果は、2022年9月7日(水)(日本時間)に米国の科学雑誌「Cell Reports(セル・レポート)」(Cell Press)に掲載されました。

 

本研究のポイント

・歯周病の原因として歯周病原細菌に応答するヘルパーT細胞が注目されていましたが、その免疫応答の詳細なメカニズムは不明でした。
・口から流れ込んだ歯周病原細菌が腸で取り込まれ、腸内細菌の影響を受けて活性化したヘルパーT細胞が口へ移動して歯周病の発症と重症化を引き起こすことを発見しました。
・腸内細菌をターゲットとした薬剤や整腸剤による新しい予防法と治療法の開発が期待されます。
 

 

概 要

歯周病は我が国で約400万人が罹患している国民病といえる疾患です。高齢化が進む中、歯周病の重症化は歯を失う最大の原因であることから、歯周病の発症と重症化のメカニズムの解明が待たれています。歯周病は歯周病原細菌による感染症で、ヘルパーT細胞のTh17細胞(※1)が原因であることが注目されていますが、詳しい免疫応答のメカニズムは不明でした。
本研究グループは、口から流れ込んだ歯周病原細菌が腸で取り込まれ、腸内細菌の影響を受けて活性化したヘルパーT細胞が口へ移動して歯周病の発症と重症化を引き起こすことをマウスの実験で解明しました。歯周病患者さんが1日に飲み込んでいる量の歯周病原細菌をマウスの腸に入れると、腸のパイエル板(※2)から歯周病原細菌が取り込まれて、歯周病原細菌に応答するTh17細胞(責任Th17細胞)が腸で活性化することがわかりました。その後、責任Th17細胞は腸から歯周病原細菌が感染している歯肉へ移動して、歯周病の発症と重症化を引き起こすことが明らかになりました。一方、無菌マウス(腸内細菌がいない)(※3)では、責任Th17細胞は活性化されず歯周病が起こらなかったので、腸内細菌が歯周病の発症に関わっていることが証明されました。また、ある種の抗生物質によってマウスの腸内細菌が乱れてしまうと、責任Th17細胞の活性化が増強されて歯周病が重症化することがわかりました。さらに、逆に歯周病の発症を抑える別種の抗生物質があることも明らかになりました。今後の検証により、腸内細菌をターゲットとした薬剤や整腸剤による新しい歯周病の予防法と治療法の開発が期待されます。  

本研究の詳細はこちら(pdf)


<研究に関するお問合せ>

福岡歯科大学 口腔歯学部  機能生物化学講座 感染生物学分野 田中 芳彦 教授

Mail: tanakayo■college.fdcnet.ac.jp

 

※ご連絡の際は、■を@へ変更してください。