福岡歯科大学 私立大学研究ブランディング事業福岡歯科大学 私立大学研究ブランディング事業

事業内容

現状と課題

近年、日本社会の急激な高齢化にともない在宅や介護老人施設での訪問歯科診療のニーズが高まっており、また誤嚥性肺炎の予防のため、口腔ケアや口腔機能の重要性が広く認識されている。さらに、歯科疾患が糖尿病などの全身疾患に影響を及ぼすことも知られている。これまでに、福岡歯科大学は口腔の健康から全身の健康を守るという「口腔医学」の理念を全国で初めて提唱し、教育・研究・臨床を通じて大学改革に尽力してきた。平成20年度からは文部科学省戦略的大学連携支援事業の代表校として、国内7大学とともに「口腔医学の学問体系の確立と医学・歯学教育体制の再考」に取り組み、全身を理解した歯科医師の育成によって歯学教育にパラダイムシフトをもたらした。次のステージでは、「口腔医学」を高齢化の進む地域社会に展開し、介護予防にむけたヘルスプロモーションや地域包括ケアに貢献することが重要である。

事業目的

超高齢社会において、QOLを維持する上で「口腔の健康」は重要である。食べる喜びは生活への満足感や生きがいを生み出し、脳および身体の活性化に密接に関与する。口腔機能の向上は、低栄養や誤嚥性肺炎の予防およびサルコペニアやフレイルなどの著しいQOL低下の予防にも重要である。さらに、生涯にわたって咀嚼機能から脳・身体機能までの活性化を図り、高齢者の認知症化を阻止するために、壮年期から口腔の健康の維持を積極的に図る新たな視点が必要になる。

そこで、本学では、現高齢者とともに今後高齢を迎える壮年層を対象に、「口腔医学」により要介護化の阻止と誤嚥性肺炎の予防、そして生涯に亘って口から食べて豊かな生活を維持するために、1) 口腔関連指標とMCIとの関連を明らかにして、認知機能を維持するために口腔健診や介護予防教室を契機としたMCIへの早期介入について検討し、2) 多職種連携により地域高齢者の医療・介護に貢献できる疾患別・病期病態別口腔ケアマニュアルを作成して、それを基にした教育プログラムを作成・実践し、3)口腔組織の再生医学的研究により口腔機能の維持・向上を達成する技術の創生を試みる。ことを目的とする。

将来ビジョン

本学の学校法人である福岡学園は、建学の理念を踏まえて平成29年度から6年間の将来ビジョンを「第三次中期構想」に記した。そこには、「口腔医学の理念の下に、日本の社会基盤を支える高度の専門的能力および倫理観を備え、高い教養に育まれた豊かな人間性を有する歯科医師、看護師、保健師、歯科衛生士、介護福祉士を養成するとともに、教育研究・医療・保健・福祉・健康活動を強化し、広く地域・社会に貢献する」とある。基本的な方針として、1)超高齢社会において口腔の健康から全身の健康を守る医療の普及のため口腔医学教育を推進すること、2)口腔医学を基盤とする研究レベルの向上を図るとともに、全学的独自色を打ち出す研究事業を通じて先進的学術成果を社会に発信すること、3)地方自治体や職能団体との医療・保健・介護・福祉における連携を拡充して地域包括ケアシステムの形成に貢献すること。を掲げている。

本事業の趣旨と全学的な優先性

地方公共団体、地元の医療機関や企業との連携によるニーズ分析に基づいて研究が計画され、さらに各団体との連携を図りながら調査・研究が実施される。大学近郊の高齢化の進む地域に対して、「口腔の健康から全身の健康を守る」ための保健・医療として口腔医学を展開し、要介護化の阻止や誤嚥性肺炎の予防、高齢者のQOLの向上、さらにはこれらを担う人材育成に繋げる。

本事業は大学全体のブランドである「口腔医学」を大きく推進する事業であり、全学的な優先性が最も高く、福岡歯科大学に所属する基礎医歯学系・社会医歯学系・臨床医歯学系の多数の研究者および大学院生が参加して、学長の指揮のもとで全学的なプロジェクトとして実施する。